2018年1月25日木曜日

直感は正しいか?!


 朝倉さんの職業はどちらでしょう?
 朝倉さんの知り合いは朝倉さんの事を次のように描写しました。
 「朝倉さんはとても論理的で正義感も強い。いつも頼りになるが、基本的に論理を重視する傾向が強く、時に他人の感情面を理解する努力に欠ける面がある。秩序や整理整頓を好み、こまかいことでもよく熟考をする」
 さて、この朝倉さんの職業は弁護士でしょうか?それとも農家の方でしょうか?

 この朝倉さんは架空の人物ですが、弁護士と農家の方、朝倉さんの職業はどちらでしょうか?
 なんとなく弁護士ではないか?とお考えになられた方が多いのではないかと思います、もしくは、これはひっかけ問題だと判断し、弁護士と見せかけて実は農家だ、とお考えになられた方も少なからずいらっしゃるかと思います。私は怪しいと思いながらも弁護士だと思いました。
実はこの質問、行動経済学の創始者ダニエル・カーネマン氏の著書「ファスト&スロー」の一節から抜粋致しております(原文とは異なりますが)。
カーネマン氏は、イスラエル人の心理学者であり、中東戦争ではイスラエル軍の心理学部隊として従軍しております、また、心理学者でありながら2002年にノーベル経済学賞を受賞するなどの興味深い経歴の持ち主です。
朝倉さんの職業の質問の件に話を戻しますが、同書によれば、この質問は本来確率の問題である。そして一般的には多くの方が人数までは知らないまでも、弁護士の人数より農家の方の人数の方が多いといったイメージは持てる、もしくは農家の方の方が多い事を知っており、それであれば朝倉さんの職業は農家である、と答えた方が当たる確率が高い筈です(事実、弁護士の人数は3.8万人(2016弁護士白書)、農業従事者数は181.6万人(2017年農林水産省統計部)と、圧倒的に農業従事者の方が多い)。
ところが、我々はこの質問を確率の問題とは判断せず、朝倉さんが、「どちらの職業のイメージに似ているか?」と脳内で質問内容を置き換えて回答している様です。
質問はあたかも朝倉さんが弁護士であるかの様に描写されており、我々が持つ弁護士のイメージ(ステレオタイプ)と朝倉さんの描写が良く似ていた事で、質問の本質から外れ「答えやすい様に脳内で質問を置き換えている」、との事です。
カーネマン氏はこの様な事象を系統的なエラーであると指摘しており、人間は必ずしも合理的な判断をしている訳でなく、人間の思考には様々な生系統的なエラーが存在する、と述べております。
同著はその様々な事例が記載されており、如何に多くの系統的なエラーが存在し、その系統的なエラーを認識する事で、今では医療現場、公共政策、軍事、経済など様々な分野で応用されている様です。
経済学に応用されたものが行動経済学と呼ばれ、昨年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授もこの行動経済学の分野での受賞となりました。
行動経済学は非常に興味深く、自分の思考を今までと異なった確度から分析出来る様な気がしてきます。
同書からいくつか事例を紹介してみようと思います。
「平均への回帰」
カーネマン氏はイスラエル空軍のパイロット養成機関の教官に対して、こんな話もしています。
スキル強化訓練においては、失敗を叱るよりも能力向上を褒める方が効果的であると。
すると、ある教官は反論したと言います、極めて難しい飛行を成功させたパイロットを褒めると、その次には前ほど上手く出来ない、まずい操縦をしたパイロットを叱りつけると、その次にはうまく出来る、と。
カーネマン氏はこれは「平均への回帰」と言われる現象で、うまく出来た時にはその次はそれほどうまく出来ない、まずかった時には程度の差こそあれその次はうまく出来る、それぞれのパイロットは平均値に近づく、本来そういうものであり、教官が叱りつけた事とパイロットのパフォーマンスには関係はない。この教官は「平均への回帰」と言う現象に因果関係を錯覚したものだ、と。
身近な事例では「夫婦の貢献度」の話があります。
夫と妻それぞれに次の様な質問をします。
「掃除や整理整頓、ゴミ出しやその他もろもろ家庭の事、夫婦合計100%としてそのうち自分の貢献度は何%か?」
お互いが同じ認識で一致していればそれぞれが答えた自分の貢献度を合計すると100%になる筈ですが、現実的には夫婦のそれぞれが回答した自分の貢献度を合計すると100%を上回るそうです。
これは事例が示唆するのは、その物事の「思い出しやすさ」が、その物事が発生する「頻度が多い事」であると錯覚してしまうと言う系統的なエラーである様です。
自分のやった事は当然思い出しやすく、相手のしてくれている事は自分のやった事より思い出しにくい(実際には自分と同程度の貢献度であったとしても)。つまりお互いが思い出しやすい自分の貢献度を過大に評価する事になると。
この夫婦の話は身近な事例でしたので、我が家でもやってみようかと思ったのですが、議論が思わぬ方向に進み、自爆しそうなのでやめておきました。
その他、同書には人間は利益に比べて損失を回避する傾向が認められる行動経済学の代表的な「プロスペクト理論」や、そうなると最初から思ってたんだ!と後から言う「後付けバイアス」、自信はあてにならないと言う「妥当性の錯覚」等、面白い事例が盛りだくさんです。
同書のご紹介←こちらをクリック

さて、話は変わりますが、中小企業経営強化税制につき留意事項のご案内です。
中小企業経営強化税制はきっちりご活用されておりますか?一定の設備投資について、「即時償却」もしくは「税額控除」が選択出来ます。

留意して頂きたいのは、中小企業経営強化税制における「税額控除は10%」だと言う事です。昨年度まで多くの企業に活用された生産性向上設備投資促進税制では、「即時償却(もしくは50%償却)」を選択されたユーザーが、その事もあってか、今年度からの中小企業経営強化税制においても昨年度と同様に「即時償却」を選択しているケースがございます(何も間違いではないのですが)。
ご留意頂きたいのは、今年度からの中小企業経営強化税制の「税額控除は10%」であり、昨年度の生産性向上設備投資促進税制の「税額控除は4%」でした、その差2.5倍です、両税制とも似たような措置なのですが、その選択による効果は大きく異なる可能性があります。
「即時償却か?」「税額控除か?」どちらを選択するべきか?朝倉さんの職業ではございませんが、慎重にご判断して頂けたらと思います。
何か疑問点がございましたら、弊社コンサルタントまでご相談頂けたらと存じます。



写真は弊社東京支店の窓から見える雪化粧の「東京ミッドタウン日比谷」、隣接する日比谷公園と相まって、まるで中世ヨーロッパのお城の様に荘厳な雰囲気でした(車が走ってますが、、、)。
「東京ミッドタウン日比谷」はいよいよ329日にグランドオープンです!ついでに弊社東京支店にもお越しくださいませ。


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